暗い道を歩く。
もう日は完全に落ちてしまっていた。
世界は昼の光から夜の闇へと支配され、
チラホラと周りに明かりが灯り始める。
そして日が落ちてしまえば、寒さはグッと厳しくなる。
それでも、ただ繋いだ手はどこまでもあたたかかった。
++++ ココア ++++
二人で帰路を歩く。
好きな人と、今日あった何気ない出来事をポツリポツリ話しながら歩く。
そんな話し一つ一つに反応を返してくる愛しい人。
ああ、幸せってこういうことかもな―――――
なんとなくそんな事を思ったりもした。
「―――――で、小田切。」
「・・・・なに?」
「・・・・毎回思うんだが、お前といい矢吹達といい、
そんな格好で寒くないのか?」
竜は自分以外の名前が出た事に僅かに眉をひそめたが、
久美子の問いは明らかに自分を心配している物言いだったので
苛立ちはしなかった。
「別に・・・」
「いいや、寒いに決まってる、今何月だと思ってるんだ!」
「だから、寒くない」
むしろ熱いくらいだ。とは言わなかった。
確かに体は寒いが、それが気にならないほど繋いだ手があたたかかった。
繋いだ手の熱が全身を支配し、いつもより数段早い胸の鼓動。
それに寒いとか暑いとか言う前に、
彼女と繋いだ手が汗ばんでいないかの方が心配だった。
「でもな、これから卒業まじかで風邪なんかひいてみろ後悔してもしきれないぞ」
「だから寒くない」
「いいや、信じない」
「本人が言ってるんだから信じろよ」
「信じれない」
「言い切るな・・・・」
「だって、お前こんなに冷たいんだぞ!!」
そう言うと、おもむろに久美子は竜の頬に手を当てた。
竜は一瞬何が起こったのかわからずに、固まった。
そして、
ドクン・・・
ことを理解した竜の胸がおもいきり跳ねた。
顔に熱が一気に集る。
だが赤くなった顔は、暗闇と寒さのおかげで久美子には気付かれなかった。
「うわ、冷た」
「・・・・・・・」
「ん?どうした?」
「・・・っ、いきなり・・触るな・・・」
「??別にいいだろ?てか、お前よくこんなになるまで我慢してるな」
「・・・寒くない」
「嘘付け、メチャクチャ冷たいぞ」
「寒くない」
「・・・・・強情」
「五月蝿い」
「五月蝿いじゃねぇし」
「・・・・・」
「黙り込むくらいなら我慢しない」
「俺がどう言っても、きかねぇんだろが」
竜は言い返すことを諦めた。
それを見た久美子は満足そうに頷いた。
「当たり前だろ!」
そう言いきった時の笑顔は最強だった。
竜はとっさに首を背けた。
「ん?どうした?」
「別に・・・・」
そのままその笑顔を見ていたら、きっと自分の押さえがきかなかった。
ああ、もう、何でこんなに可愛いんだよ!!
心のままそう叫んで、抱きしめてキスしたくなる時もあるのだ。
「でだ」
「?」
「そんな寒そうな小田切君に温かい飲み物を奢ってやろう」
「・・・・・・」
「先生に感謝しなさい」
久美子は竜に人差し指を指しながら言い放った。
そしていそいそと小銭を出して竜に渡した。
小銭をなんとなく受け取った竜は、
急に会話が奢る話になったのに疑問を覚えた。
そしてその空気を悟った久美子は竜に理由を話した。
「今日は、嬉しかったからそのお礼だ。」
竜は一瞬久美子が何を言っているのか理解できないでいたが、
よくよく考えて多分教室での事なのだとあたりをつけた。
「・・・・・・俺がお前に礼を言ったのに?」
「いいんだ、あたしはその礼が嬉しかったしな」
「・・・安っすい礼だな」
「悪かったな、どうせ給料前ですよ」
「いや・・・・ありがとう」
「ああ。」
久美子に返事を返しているとき、
竜はずっと優しい目で久美子を見ていた。
発する言葉一つ一つにはまるで愛おしさが溢れんばかりの慈愛が込められ、
表情は辺りが暗くて全てを読み取る事は出来なくても、
その周りを包む優しい雰囲気で理解できるほど十分だった。
ただ問題があるとすれば、
それを向けられていた久美子は、その声にその瞳に
どのような意味が込められていたかなど全く理解していなかったという事だ。
「・・・・・ちょっと、ここにいろよ」
「あ、おい、小田切?」
「すぐ戻る」
そう言い残すと、竜は急に久美子の側を離れ軽く駆け出した。
久美子はわけもわからず竜を待つ事になった。
暗い道端で一人、誰かを待つというのは少し不安だった。
それが三分もかかっていないことだったとしても長く感じた。
「山口!!」
竜が戻ってきて自分を呼んだとき、何処か酷く安心していた。
そして知らず知らずに顔が緩む―――――
「・・・・急にどうしたんだ小田切?」
「ほら」
「えっ?」
竜から投げて渡されたのはホットココア。
「お前の分」
「・・・あたしのって、あたしお前の分しか渡してないだろ?」
そう、久美子は一人分、つまり竜のだけしか小銭を渡していなかった。
なのに手元にあるのは自分と相手側の二つ分の飲み物。
計算が合わない。
「だから、お前の分。」
ようやく事を理解した久美子は口から自然と笑みが漏れた。
「・・・・ぷっ」
「俺からも礼の礼。だから奢られろ」
「あはははは。結局奢って奢られたら奢った意味ないな」
「かもな」
「でも、今すっごく嬉しいよ小田切」
「・・・・そうか」
「うん。ありがとう」
「・・・・ああ」
久美子と竜はまた帰路を歩き出した。
久美子はホットココアを片手に、
竜はホットコーヒーを片手に
そして空いている方の手は互いの手を繋いで―――――
End
後書>>
こんな事もあってもいいと思う。
で、まず一言。
ごめんなさい!!
さと様、マジ遅くなってすみません。
時期が違いすぎます。今季節はウザッタイぐらい暑い夏。
というか、通り越して秋ですよ!!
これは卒業マジカのお話し。
季節はもちろん冬。
ごめんなさい。
リクをもらったのに結局半年も待たせてすみません。
ハウッ・・・・
本当はもっと早くできる予定だったんですが・・・・
結局こんなにことに・・・・・
本当にお待たせしてすみませんでした・・・・(T◆T)
h18.9.5
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