今は昼休み。


偶々一人で気分転換にきた屋上に先客が居た。





先客は俺たち3Dの担任、山口久美子。


通称ヤンクミだった。









+++++ 始まりはいつも些細なもの +++++









風は穏やか、天気は良好。


昼寝にはもってこいの温暖気候。





慎は、自分が隣に腰掛けているのにも気付かずに


暢気に惰眠を貪る無防備な担任の様子を眺めていた。








なんというか、この担任は

昼寝をしている時でさえ表情がころころ変わってる。








(つか・・・・・・おもしれぇ。)








穏やかな顔をしていたと思えば、苦悶の表情を浮かべたり、

そしてクスクスッと笑ってみたりと・・・・・・





どうやらかなり愉快な夢を見ているようだ。








「いったい、どんな夢見てるんだよ・・・・」








思わず口をついてでた言葉、

彼女はいったいどんな夢を見ているのだろうか・・・・・

俺は自分でも気づかないほど穏やかに彼女を見ていた。





その時、彼女が僅かに身じろいだ。





「んっ・・・・・・・・」





俺はただ彼女に見入っていた。


そして彼女の唇が動いて、とある名前を口にする。











「ん〜・・・・・クマぁ・・・・それあたしのだ・・ぞぉ」











久美子は眉間に皺を寄せて夢の中のクマに抗議していた。


それを見た瞬間、慎は僅かに噴出した。








「くッ・・・・」








ああ、なんと微笑ましい担任なんだろう。


夢の中でも、3Dの生徒たちと過ごしている。


そして彼女の唇から次々と3Dのメンバーが呼ばれた。








「内山〜・・・・クマを・・・とめ・・ろぉ・・・・」





「野田〜・・・・南〜・・・・・お前・・らぁ・・・・・」





「むぅ・・・・・・・」








次々と名前が出てくるのに、

なぜか「沢田 慎」の名前は一向に出てこなかった。





何となく、そのことに慎は少し憤りを感じた。


だが、何故こんな気持ちを抱くのかさえわからなかった。








ただ、彼女に名前を呼んでほしかった。








気付くと・・・








「・・・・・・・沢田。・・・・・沢田・・・慎。」








自らの名前を口にしていた。








「ん〜・・・・・・・沢・・・田?」








その名前を聞いた時、

久美子はひどく穏やかな表情を浮かべ名前を呼んた。








「・・・・・沢・・田ぁ・・・」








それは愛おしく、どこまでも暖かい・・・


気付いた時には、慎はその笑顔にどうしようもなく心を奪われた。











「っっ!!・・・///////////」














・・・・・・ド・・クン!!














慎の頬に熱が集まる。


久美子は優しく微笑んだ後、スースー、と規則正しい寝息をたてはじめた。





慎はそれを始終見て終わると、真赤になっているであろう自分の顔を抱え、

動悸の激しくなってしまった胸を押さえ、その場を早足で去った。











(何だ・・・コレ・・・・・何なんだよコレ!!)








トクン。





トクン。





トクン。








胸が甘く軋みだす―――――











それは、まだ本人さえ気付いていない淡い想い。


始まりなんて、いつも本当に些細なもの・・・・・


きっと彼はすぐに自分の気持ちに気付くだろう―――――


けれど、気付いたとしても認めるのには幾ばくか時間がかかるだろう。





それでも彼は彼女を好きになる。


だってもう心は彼女に奪われてしまったから・・・・








穏やかな午後の穏やかな日常。








変わってしまったのは一人の青年の心。


変えたのは一人の穏やかな寝顔の担任。















END





























**後書き・・・という名の言い訳**

こういう感じのシチュエーションって、ベタベタだけれども・・・・・
一度はやってみたいって事で作りました。(〃´∀`)

似たようなのがいっぱいありそうですが、まぁ、気にしないで下さい(笑

あと、コレと同じシチュで、
もう一つ違った終わりのお話しも書いてます。

一応、ギャグっぽく。(笑

まぁ、出来次第upします。

H20.4.21


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