彼女の


穏やかな寝息が耳に優しい―――――





ただ、本当にそう思ったんだ。









+++++ 始まりはいつも唐突に +++++









昼休み、何となく五月蝿い教室から逃れて屋上に来てみれば

屋上にある唯一のベンチでよく見知った人物が偶々惰眠を貪っていた。





そして俺は、その惰眠をのんきに貪っているこいつの隣に陣取って

何となくその様子を眺めていた。





眠っていた人物は俺たち3Dの担任、山口久美子。


普通の教師とはだいぶんかけ離れた、俺たちの唯一の理解者である。








まぁ、とりあえず。


一言いって普通じゃない。








一度喧嘩が始まれば止めるどころか応援し始める。


危ない事や面倒事が起これば進んで首を突っ込む。


色々と今まで出会った先公とは尽くかけ離れていた。








つまり、変なヤツだ。


けれど憎めないほどに一生懸命な教師だった。








そして


・・・・・・・・寝こけた担任の隣に座って早数分。








まだ俺の存在に彼女は気付かなかった。


よほど疲れているのだろうか?








しかし、なんというか昼寝をしているときでさえ彼女の表情がコロコロ変わってる。


まぁ、一言いって・・・・・・おもしろい。








ひどく穏やかな顔をしていたと思えば、


次には苦悶の表情を浮かべていたり、


そしてクスクスッと笑ってみたりと・・・・・・








どうやら相当愉快な夢を見ているようだ。








「いったい、どんな夢見てんだよ・・・・」








思わずボソリと口をついてでた言葉、


彼女はいったいどんな夢を見ているのだろうか・・・・・








ただ、その時の俺は周りが見たら驚愕の表情を浮かべられるくらいに


自分でも気づかないほど穏やかに彼女を見ていた。








ふと、彼女が俺の言葉に反応するように僅かに身じろいだ。








「んっ・・・・・・・・」








俺はただ彼女に見入っていた。


そして彼女はとある人物の名前を口にする。











「ん〜・・・・・クマぁ・・・・それあたしん・・・だぞぉ」











久美子は眉間に皺を寄せて夢の中のクマに抗議していた。


それを見た瞬間、慎は僅かに噴出した。








「くッ・・・・」








ああ、なんと微笑ましい担任なんだろう。


夢の中でも、3Dの生徒たちと過ごしている。


そして彼女の唇から次々と3Dのメンバーが呼ばれた。








「うちや・ま〜・・・・笑って・・いで・・・・・・とめ・・ろぉ・・・・」


「のだ〜・・・・み・なみ〜・・・・・お前ら・・・・・」


「むぅ・・・・・・・」








けれど次々と名前が彼女の唇から出てくるのに、


「沢田」の姓は一向に出てこなかった。





慎はその事に無意識にも少しイライラとしはじめた。


けれど何故こんな気持ちを抱くのかさえわからなかった。





ただ彼女に何故か自分の名前を呼んでほしかった。


気付くと・・・








「・・・・・・・沢田。沢田・・・慎。」








自らの名前を紡いでいた。


慎はその事実に気付いて慌てて口をつぐんだが、








「ん〜・・・・・・・沢田?」








その時、久美子はひどく穏やかな笑顔を浮かべた・・・・














トクッ・・・・・・・


その瞬間、慎の鼓動は静かに、けれどいつもとは違う脈を打った。














しかし次の瞬間、彼女は急に眉間に皺を寄せた。


そして・・・・

















「お前まで・・・・・あたしのドラ焼き取るんじゃねぇ!!」

















と、わけのわからない寝言を叫んだ後


久美子は眉間に皺を寄せギリギリと歯軋りをした後、


しばらくして、またスースーと規則正しい寝息を立て始めた。








「ドラ焼きってなんだよ・・・」








慎はなんだか訳のわからないことを叫ばれて、


ムカツクやら切ないやら・・・・何でそんな事を感じるのか余計に意味がわからなくて脱力した。


というか、何だかやたら切なく、しょっぱい気持ちだ。








そして何かを期待してしまった自分が情けない。








けれど自分は彼女に何を期待していたのかすら分らない。


しかし何が悲しくて、こんな微妙な気持ちを味わわなくてはならないのだろうか。


分けがわからなさ過ぎて結局慎はこの真相を投げた。








俺はいったい何と言って欲しかったんだろう。


よくわからないモヤモヤとした感情が自分の中に渦巻いた。








とりあえず慎はそれを始終見て終わるとムカツクけれど・・・・


久美子の傍を離れたくなくて隣に座っていた。








この気持ちはいったいなんなのか、


どうして自分はこの隣で寝ている担任の傍を離れることが出来ないのか、


どうして自分は離れたくないのか・・・・・・・








「わけわかんねぇ・・・」








無常なる言葉はボソリと宙へ舞った。











その感情は本人さえまだ気付いていない淡い想い。


気付くのはもう少し先のお話・・・・











とりあえず。


昼休みの終わる5分後に腹いせとして彼女の鼻を摘んで起こしてやろうと慎は決めた。


それぐらいの腹いせは許されるハズだ。















END





























**後書き**

すみません!!すっかり遅くなりました!!
やっと書けましたよこのお話・・・・・(=□=;)

というか、いつぶりのupでしょう(汗

何だか申し訳ございません。
それも中途半端。な気がする。
いや、キチンと自分的には終わらせたツモリですが・・・・・・
とりあえず。このお話の続きにsss的な物は作るかもしれない。。。。

なら要らない気もしますけどね(笑
H21.1.28


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