カチリ、カチリ、





秒針が静かに、それで居て確実に時を刻む。









+++++ 始まりはいつも唐突に 〜5分後〜 +++++









昼休み終了の一歩手前の予鈴が鳴る3分前。


ようは担任を起こすタイムリミットだった。


実際は授業なんてタルイ物がなくなれば万々歳だがそうも言ってられないのが3Dの現状。





ついでに次の3Dの担当教科は担任の数学。


つまり3D生徒全員が唯一真面目?に受けている教科だ。





・・・・・・他の教科からすれば真面目だろう。


キチンと全員参加である。





なのに、教えるはずのこいつは起きる気配が無い。


それに担任が授業をサボったなんて言語道断!!とか言われれば


教頭とかがネチッコク五月蝿い。








「・・・・・おい」








スースー・・・・・・(まだ寝コケ中)








一応声を掛けてみたが反応は無し。


慎は、深い溜息を一呼吸ついた後、容赦なく久美子の鼻を摘んだ。

















・・・・・・・プギュ。

















フガッ!!!!(鼻で呼吸が出来なくなった)








・・・・クワッ!!(その瞬間、久美子の目が大きく見開いた)


















「にゃんにゃちぇんぺんちぇぃきゃ!!にゃににゃおきょっちゃ!!」





(訳:何だ天変地異か!!何が起こった!!)








彼女の素っ頓狂な第一声は鼻を摘まれたうえ、


寝起きで呂律が回ってないらしくきちんと喋れてなかった。








「・・・・・・ほぇ、ちゃわだ?」





(訳:・・・・ほえ、沢田?)








寝ぼけ眼のままだったが、今の自分の現状が把握できていなかった。














ぷっくっく・・・・・・・っくっくっく・・・・・・














その寝ぼけた声を聞いて慎はやっと久美子の鼻から手を離し、


腹を抱えて声を押し殺すように笑っていた。





久美子はやっと自分のやられた行為(鼻つまみ)に気付いて頬を赤く染めた。


そして慎の胸に残る蟠りは笑と一緒に解けて流れてしまった。





ただ久美子は妙な起こされ方をしてちょっと不機嫌だったが、


慎の珍しい腹を抱えて笑う姿を見られたので、とりあえず不問にふす事にした。


でも一応、羞恥も混ざっていたので抗議はした。








「さ、沢田!!お前なんつー起こし方するんだ!!」


「っくっく・・・・・お前が起きないのが・・・・・悪い・・・クッ」


「っ!!それでも起こすんだったらもっとマシな起こし方があっただろう」








「・・・・・・・はぁ・・・(落ち着いた)・・・・・文句言うな・・・・」


「文句言いたくもなるわ!!」


「起きないお前が悪い・・・・」


「確かにソレはそうだけど・・・・・って、お前話の途中だぞ何処に行く!!」








久美子はベンチに座ったまま文句を言っていたが、


慎は急に立ち上がったと思ったらスタスタと屋上から出て行こうとしていた。








「・・・・・・何って、時間」


「・・・・・・・へ?」








キーンコーンカーンコーン×2








「次、俺たちのクラスお前の授業だろうが」


「・・・ああ!!!!!!!!」


「気付くの遅せぇ」


「うわぁ、待て沢田!!・・・・って、待つんじゃない先に行け沢田!!」


「どっちだ・・・・・」


「あ、えっと、すぐに行くから先に行ってろ!!」


「・・・・・・・」








そのセリフを聞いて慎は止めていた足を再び動かし、


屋上から出るために扉に手を掛け開けた瞬間、久美子に呼び止められ振り返った。








「あ。沢田」


「・・・・今度は何だ?」


「ん、起こしてくれて、ありがとう!!」








陽だまりの中、久美子は太陽のように笑って慎に言い放った。


慎はキラキラな久美子の笑顔にまた胸がまた甘く騒いだような気がしたが


その事実に気付かないフリをした。








慎はその声に答えるようにニヒルな笑みを向けてその場を去った。


何だかんだで幸せな午後の出来事だった。















END





























**後書き**

おまけです。

前回の「始まりはいつも唐突に」の5分後の世界。

・・・・・もしかしたら後一つおまけをつけるかもしれません。

未定です。

H21.1.30


戻る