「ほら、お前で最後だ小田切、受け取れ★」

「なんだこれ・・・・・」



久美子から手渡された黒い物体。



「あ?みりゃわかるだろ!愛のこもったチョコレートだvv」



久美子は鼻高々にクラスの生徒全員に手作りちょこれーとを手渡した。











「「「「「「「「「「「「「「「 ちょこれーと・・・・・・ 」」」」」」」」」」」」」」」











そしてそれは、別の意味でクラスの心が一つになった瞬間だった。



担任から渡された黒い物体は、あまりにも歪な形のチョコレートだった。















++++++++ バレンタイン ++++++++















「・・・・・・・・・」




竜は一瞬、走馬灯を見たような気がした。









思い出が脳内で駆け回る・・・・




久美子とはじめて出会った時の思い出。

隼人たちとバカをやったときの思い出。











ああ、なんて懐かしい・・・・・











「ん?どうした小田切?」

「・・・・・べつに」





久美子は不思議そうに竜に話し掛けた。

話し掛けられた竜は、飛ばしていた意識を久美子に戻した。











ああ。

人間なんかやばいものに出会うと、走馬灯を見るって言うのは本当みたいだ。




実際みたのも初めてだ。











そんなことを考えていたら久美子が話し掛けてきた。



「小田切・・・・日本語はちゃんとつかえ、べつに・・・で終わらすんじゃねぇ」

「・・・・・・べつに何でもねぇ」



久美子は少し呆れながら竜の様子をみていた。

久美子のそんな様子をさらりと流した竜は、渡されたものを見ながら考えた。











歪な黒い物体。




これは・・・食えるのか・・・・・?と











しかし、クラス中でチョコと呼ぶにはいささか勇気がいるものを「ウマイ」と言った奴がいた。






そいつは、クラス一の大食いの大熊だった。






クラス中があっけに取られたこの一言。

というか、その瞬間クラス内の時間が止まったように思えるほど静かだった。





大熊は目の前で、あいつが渡したチョコレートを貪り食っていた。





クラス全員が些か不安にかられながらも、 その言葉を信じ恐る恐るそれを口に運んだ。











「うめぇ――――!!」


「うまい・・・・」





「だろ★」











久美子から渡されたチョコレートは美味かった。


形は凄まじく歪でも、味は見た目とは逆で案外美味しかった。










てか、普通にギャップが激しすぎるだろ・・・・・



こんなヤバ気なものを見たら、

あいつ以外から貰ったものであれば、 確実に口に入れる前に捨てただろう・・・・










・・・・・ん?



なんで、あいつ以外なんだ・・・・・??










そんな竜の思考はさておき、



当の久美子は、自分が作ったチョコを美味そうに食べる生徒を見て、
ただ満面の笑みをこぼしていた。












トクン・・・・・・












「・・・・・?」



小田切は無意識的に胸を押さえた。



「どうしたの竜??」

武田が小田切のいつもと少し違う様子に気がついて話し掛けてきた。



「なんでもない・・・・」



あいつの笑みを見た俺は、胸がなぜか高鳴ったが、
その時はとくに気にも止めなかった。










俺は恋に落ちた。



正確には、落ちていた。



どこかの誰かが言った言葉がある。










『恋はするものじゃなく、落ちるもの』だと・・・・・・










俺はまだ気付かない。


そして、自覚するのはもう少しあとのこと・・・・・・・













「小田切どうした?」










問い掛けるあなたの笑顔がただまぶしくて・・・・・


高鳴る胸は止まることを知らず・・・・







「べつになんでもねぇ・・・・・」







ああ、俺は無意識にあなたに囚われてゆく・・・・・・












END












++あとがき++
今回の小説は、「青空」と同じバレンタイン設定を使ってます。
ついでに言えば、ここの竜さんは自分の想いをまだ自覚してません。


いやぁ、たまにはこんなのもいいなぁ・・・なんて思って作成。


かたちにすると、竜・・・>クミ?みたいな感じですかねぇ。




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