俺はここにいる。


俺はここにいるのに・・・・





なぁ、何で気付かない


俺はずっとお前だけを見てるのに





どうすればお前は俺に気付いてくれる?


どうすればお前は俺を見てくれる?








どうすれば俺はお前に触れられる?








そうして慎は一つの妙案を思いついた。


好きな人に意識してもらうには―――――








慎は少し考えたが、思いついたそれを実行に移すことにした。








「・・・・・・・・・・おい・・・」


「んっ?なんだ、どうした沢・・んっ・・・・・・・・・!!!!!!!!!」








久美子が慎に呼ばれて後ろに振り返った瞬間、唇に何かが触れた。

















ちゅっ・・・・・・・

















それは掠め取るようなキス。


次いで慎は久美子の耳元に唇を寄せた。





「・・・・・・・・俺、お前のことが好きだ・・・・」





それは密やかな告白。


そして事を終えた慎は不敵な笑みを久美子に残し学校に向かって去って行った。








―――――これは賭け








このキスで俺は彼女に意識されるか、否定され嫌われるか・・・・・








冷静を装っていたが、心臓はありえないくらい脈打ってるのが解る。


掌もしっとり汗をかいて、足も歩きながらでも解るくらい震えている。





それでもこのキスに賭けた。


賭けたかった。





もうこれ以上、
自分ではない男の存在で彼女が幸せそうにするのが許せなかった。


もう自分でも止められないくらい、
自分の内側が醜い嫉妬の塊になっていたから・・・・








「・・・・・・!!!!!!な・!!・い・・・な―――――!!!!!!!!!」


(訳:なにを!!今、何をしたんだ!!)








久美子の口から発せられる音は上手く言葉に変換されていなかった。


そしてあまりの急な出来事に久美子は、顔を赤く染め固まっていた。


それもキスのせいで頭の中が真っ白になっていた為、
告白の言葉は届いていなかった。<意味無し!!>











―――――沢田は私に何をした!!











唇に一瞬だけ触れた柔らかな感触。


ありえない出来事に、脳内での自己処理が出来ず立ち尽くしていた。











―――――沢田は私に何をした!!











―――――沢田は私に何をした!!











―――――沢田は私に何をした!!














・・・・・ガガガッピ―――――――――


脳内エラー・・・・・・・・・ポン。














理解すると更に久美子は真っ赤になった。














少しして茹蛸状態の久美子の後ろから陽気な声が聞えてきた。





「あらあら春ですね〜・・・山口先生」


「おはよヤンクミ。なんや朝から春やなぁ。にしても沢田も何焦っとんだか・・・

まぁ、攻め落とす相手がこんな調子やったら仕方ないかも知れへんけどなぁ、

にしても・・・・そのくらいで普通そこまで固まるかぁ?ヤンクミ?」





久美子はその声に反応して後ろへ振り返った。





「・・・・・ふ、二人とも、一体いつから・・・見てたんですか・・・」


顔を真っ赤にしたまま久美子は二人に問い掛けた。





「んっ?あんたらが『ちゅー』する少し前からやけど・・・・」


「うわぁーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」





久美子はその言葉に敏感に反応した。





「めちゃ、動揺してんなぁ〜」


「だって!!あんな事があったんですよ!!」





久美子はそう言うと動揺を隠さなかった。





「・・・・・もしかして・・・気付いてなかったんですか?」


「そんなの気付いてないに決ってるじゃないですか!!!

あんな事があったんですよ!!ちゃんと後ろに居るなら声かけて下さいよ!!!!」


「ちゃうちゃう・・・確かにそれもそーなんやけどな、

あたしらが言いたいんはそっちやない、ホンマに全然全く気付いてなかったんか?」


「だから・・・・何がですか?」


「ですから、沢田君の気持ちですよ。」








「・・・・・・・は?」








久美子の間の抜けた返事に、しばらく沈黙が走った・・・





「・・・・・・こらあかん、マジで気付いてないわ・・・」


「あらあら、これでは沢田君も大変ですね〜・・・」


「だから、なんでそこに沢田が出てくるんですか!!!!!!」





久美子は『沢田』の名前に過剰な反応を表した。





「ま、ヤンクミ鈍いから、ある意味あれで丁度エエかもしれへんけど」


「だから一体何が!!!!!」


「でも・・・これだけやっても本人がこれじゃ焦りもしますって」


「そやな〜・・・」


「ホント、普通気付きますよ・・・・」





「だから何のことですか!!」





「けど、あの男にここまでの事をさせたヤンクミも十分凄いわ。」


「ええ、普通ならそんな行動を起こさせる前に気付きますよ」


「まっ、取り合えずヤンクミ。早よ動かな学校遅刻するで・・・」





「だから、な・・・・・・ああ!!!!遅刻!!!!また教頭に怒鳴られる―――――!!!」





久美子は腕時計を見て、あわてて学校に駆け出した。


後ろの二人は久美子の様子を微笑ましく見守っていた。


あと、ほんの少しだけ慎に同情した。





(がんばって、沢田君。)


(気張れや沢田!!)














END・・・・・?








これで終わり??





前編へ














++後書++
やっぱいきなりキスされたらビックリするかなぁ?

てか、今一切り返しのいいのが思いつかなかったんで
「ちぅ」を使ってみました。

やっぱ自覚させるにはこれが一番手っ取り早し。

まぁ、おかしな所があっても笑って許して(逃)ε=ε=ε=ε=(ノ*´Д`)ノ


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