もう抑える事が出来なかった。


抑え込む術を持たなかった。





箍が外れてしまえば
もう止めることなどデキナイ・・・・・・





それも分かっていた、想いや願いはただ大きく








『あなたを手に入れたい』








ただその想いだけが、どこまでも強く―――――














+++++ 放 課 後 +++++  














朝の職員会議の終わった後、
3Dの教室へ向う久美子の足は確実に重かった。











・・・・・今朝、あたしは学校へ向う途中、偶然沢田に会った。

そして簡単に挨拶を交わして気付いたら、えっと、その・・・・


キ、『キス』を・・・・された。


それは一瞬の事で、
一体なんでこんな事になったのかは全然分からなかった。




前に『ほっぺにちゅー』くらいなら言った事はあるけど・・・




というか、あたしは先生で沢田は生徒・・・・

あんな事されたのは初めてで・・・・

・・・・てか、あれがあたしの・・・・『ファースト・キス』じゃないか!!!!











今気付いた驚愕の事実!!




おせぇ。











沢田〜〜〜!!!よくもあたしのファーストキスを〜〜〜〜!!!











久美子の中に慎への憤怒の気持ちが盛り上がってくる
が、何故かすぐ冷めてしまった。


何故だろうと思う反面・・・・
これから先の事を考えると、どうしようもない気持ちになった。











取り合えず、あたしは一体これからどうしたら・・・・ハッ!!!





考えてる場合じゃない!!

早く3Dに行かないと授業が・・・・でも・・・・・











久美子はそんな事を延々と考えていて教室に辿り付く時間が随分かかった。





「・・・・・・・ハァー・・・・よし!ファイトー・・・・オウ」





いつもより気合を入れて教室に入った久美子だったが
相変わらず教室は五月蝿いままで状況もいつもと少しも変わっていなかった。


幸い、今朝の慎とのそれを見た人物は同僚の二人だけみたいだ。

そして教室の状況を見て久美子はホッと安堵した事は言うまでも無い。


今、一番気になる慎も今朝の事はまるで何事も無かったかのように、
普段と態度は変わっていなかった。





まるでそれは学校へむかう途中の並木が見せた一時の夢。





でも、あのことを夢だと思う事に何故か少し胸のあたりが痛んだ気がした。

しかし久美子はその事に気付かなかった。



久美子は余りに普段と変わらないこの状況下に安心して
次第に『今朝の出来事』の事を忘れていった。















――――― 決して忘れてはいけなかったのに・・・・・・















夕方、今日も授業が終わり学校は放課後を迎えた。





「フ――――――、今日も疲れた〜・・・・ん?
あれ学級日誌が・・・無い!!あちゃ、3Dの教室に忘れて来たんだ〜・・・」





仕事が一段落して職員室にいた久美子は、
夕暮れの教室へ学級日誌を取りに行った。

しかし誰もいないと思っていた教室にたった一人、慎の姿があった。





「・・・・ん?なんだ沢田まだ帰っ!!!!!!!!」





久美子は慎と二人っきりのこの状況で
『今朝の出来事』の事をありありと思い出してしまった。


ちなみに心の中で、











よりにもよって今思い出す事ねぇだろ、あたし!!











などと、内心自分にツッコミを入れてしまった事は言うまでも無い。





「・・・さ、沢田、お前まだ残ってたのか、お前も早く帰れよ・・・
もう下校時刻はとっくに過ぎてるんだからな・・・」


「・・・・・・・・・」





慎は無言のまま久美子をジッと見つめていた。

久美子はなんとかこの場を逃れようと
教卓の所まで早足で近づき日誌の置いてある教卓を見た。

しかし、教卓の上にも中にも学級日誌は見当たらなかった。





「あ、あれ・・・?」


「・・・・・・日誌なら俺が持ってる・・・」





久美子の様子をジッと見ていた慎が不意に口を開いた。





「そ、そっか、なら早く教えてよ・・・探したじゃないか、
それにもう暗くなるし、さ、沢田だって晩メシの用意とかあるだろ・・・」





久美子はなるべく早くこの状況から離脱したかった。





「・・・別に・・・いつも適当に食って寝るだけだし・・・・・」





慎のそんな言葉を聞いて何故だか久美子は胸がつまるような思いがした。





「・・・・・そっ・・・か・・・・」





久美子は知っていた。

慎の部屋には必要最低限のもの以外ほとんど何も無く
食生活もどんなに寂しいものか・・・





慎がそんな事を言うと会話がしばらく途切れた。





























TO BE NEXT・・・・・・>














++後書++
今回。というか、
私が書くこのstoryの慎さんは、か・な・り積極的ですよ〜〜(>д<)ノ
てか、めずらしく積極性を目指してます。

この2章はちょっと連載長くなると思いますが
気長に待っててください。m(>○<)m

h18.8.19


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