二人の間に沈黙の状態がどれくらい続いただろう・・・


久美子が教室に入ってから日も少しずつ傾いてきた。

やがて慎が久美子に再度口を開いた。





「・・・・日誌取りに来ないのか」


「・・・ああ!!そうだ日誌」





久美子はさっきのことで何も考えられなくなっていた。


慎に『日誌』の事を言われて『日誌』の事だけを思い出したが
『今朝の事』までは頭が回らず思い出さなかった。





それはまるで、ところてん。





次の情報が入ってしまえば、
前の情報、つまり先に入った情報は抜け落ちてしまう。








なんでここまで救われる事がないのだろうか・・・・








そして慎の所まで普通に日誌を取りに行った。





「・・・・・・ところでヤンクミ」


「ん?何だ沢田??」





久美子は慎にいつもと代わらないような無邪気な笑顔を向けている。

そんな久美子の表情を見て、慎の胸の奥がまたチリリと痛んだ。

久美子は慎から日誌を受け取りながら聞いた。

『今朝の事』を完璧に忘れていた久美子は普通に慎に接していたが、
慎は急に久美子の右手首をつかんで自分の方へと、かなり至近距離まで引き寄せた。

慎は『今朝の事』が切っ掛けになり、
久美子の前で抑えていた自分を少しずつ解放していっていた。





簡単に言えば、


気持ちを抑えていた箍が外れていた。








そして箍が一度外れてしまえば抑えることなんてもう出来なかった。








まさに、ここまでくると開き直りである。








「結局ヤンクミは俺の事・・・どう思ってんの・・・・」








慎は久美子の耳元で問い掛けた。

距離は互いの呼吸を感じ取る事が出来るくらい近い。











俺は今朝こいつに『キス』した。


でもこいつは俺の気持ちに気付いてんのか?


こいつが鈍いことは知ってる・・・・


こいつの場合あそこまでしても気付いてない場合がある


実際こいつは俺の事も少しは考えてくれてんのか?





俺の事、少しは見てくれてんのか・・・











そう思うと慎は言いたかった言葉を抑えて飲み込んだ。


慎はこの一言を聞く為だけに日誌を隠して
久美子が取りに来るのを長時間教室で一人待っていた。








「な、なに言って・・・なに言ってんだよ沢田!!!」








久美子はいきなり核心をついた問いかけに顔を赤くしたが
何とか慎から顔をそらして逃れた。


だが離れることは出来ない。





久美子は慎に囚われている右手首をどうにかしたかった。








「・・・放せ」





「嫌だ・・・・」








「もう一度言う、ハ・ナ・セ!!」





「イ・ヤ・ダ!!」









慎はこれ以上何も言わず
久美子の右手首を固く握ったまま静かに質問の返答を待っていた。


しばらく沈黙が続いたが
慎と繋がった右手首だけが少し汗ばみ二人の熱を通わせていた。





どれくらい時間が経っただろう、たかが1分が随分長く感じた。





やがて久美子は顔をそらしたまま質問に応えた。





「・・・お前はあたしの大切な生徒・・・じゃないか、そんなのわかってるだろ」


「・・・今朝、俺がキスしたのに・・・それでも・・・か?」





久美子は、そらした顔をさらに真っ赤にして応えたが声も所々裏返っていた。





「そ・・・そうだ、それでもあたしにとって、お、お前は大切な生徒だ!!」


「・・・ふ〜ん・・・・・」





慎はあまりに想像のついた返答に、
空いている右手で髪をかき上げ力なく相づちを打った。


その様子を見た久美子は慎のその仕草にドキリとした。

だが、何故ドキリとしたかはわからなかった。





不意に慎は久美子に残った右腕を伸ばした。





それに気付いた久美子は警戒心を更にむき出しにした。











張り詰め緊迫した空気











だが、そのなかで大きな足音が段々と
自分達のいる教室に近づいて来るのに気が付いた。











ドタドタドタドタ・・・・・



バタン!!!!































TO BE NEXT・・・・・・>




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++後書++
皆さま、ひほ。
毎日お元気ですか?

しばらくワタクシ、パソを放置してました・・・・
管理人として失格ですよマジで・・・・(T◆T)

ちょっと色々とお疲れモードで、
パソにここ2.3日触ってませんでした。



ではでは、
さあ、どうなるんでしょうこの先(汗)

なんか、本当に慎さんが積極的。

てか、人変わってる・・・・・(汗)

h18.8.25


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