その瞬間、それは全て曖昧で・・・・・














+++++ オレンジ +++++














俺達を受け持つ担任は、はっきり言って何処かずれている。
それはまず間違いない。












そして俺はそのおかしな担任に惚れている。


それも・・・・・・・間違いない。












担任の名前は山口久美子。

俺達が卒業するまでの3ヶ月間を受け持つ担任だ。







はっきり言ってあいつはおかしな先公だ。







その考えは未だに変わることは無い。


というか、その見方を変えるつもりは無い。







俺達は学校が嫌いだった。
というか教師が、先公が嫌いだった。






だが今はどうだろう・・・・・
山口が担任になってから学校がただ面白い。






あいつが、
山口が俺達の学校に対する面白くないというイメージを180度変えてしまった。






だから学校も山口みたいな奴がいるんなら悪くないと思ってる自分がいる。

けど、そんなことを思っているのは俺だけじゃない。

クラスの大半がきっとそんなことを思ってる。





中には俺と同じように山口に惹かれている奴もいる。
そして惹かれながらもまだ自分の気持ちを自覚していない奴も多い・・・・







結論。

敵はあまりにも多すぎる。







その証拠に最初に比べて、
あいつの授業をサボるやつが今では全くいなくなった。




というか、学校を休むやつが極端に少なくなった。




一言言えば、あいつは何をするかわからないから面白い。
その日何をするかも、全ては担任しだいだ。







あいつは、変な女。







なのに惹かれずに入られない・・・・・・・・厄介な女。



俺達は山口が山口だから惹かれる。

他の女だったらきっとこんなに惹かれたりはしない。

きっと言葉もあまり心に響かない。



あいつは、他の先公と違って出来ない事を無理やり押し付けたりも、

理由も聞かずに怒鳴りつけることもなかった。




俺達を表面だけで評価せずに、はじめから俺達の中身を見てくれた。

俺達と正面を向いて向き合ってくれた。




それがただ心地よかった。

ただそれが嬉しかった。

俺達の居場所はここにある、あいつの言葉はそう信じさせてくれた。










それが最初だった。










そして時折見せる変わることのない強い瞳、俺達は無意識にその瞳に囚われていった。




今までの先公なら何かがあれば俺達を当たり前のように切り捨てた。
まるで捨てるのが当たり前だというように・・・・・






なのにあいつは違う。


あいつだけが違った。


たとえ自分が傷ついたとしても、あいつは他人を・・・・俺達を信じ続ける。






俺はあいつを酷く傷つけたことがあるから、

このクラスの中で、それが1番よくわかるのかもしれない・・・・・。





けれど、そのことを思い出すと酷く胸が痛い。





その時はまだ自覚していなかったとはいえ、
胸の痛みは、まるで警告音のように俺に何かを告げていた。

なのに俺は警告を無視して自分が惚れている相手を傷つけた。











ただ先公という、くだらない理由で・・・・・











これは罰だ。

許されることの無い罰。

俺はこの痛みを忘れることは出来ない。






忘れられない。



忘れてはいけない。






これは俺の自業自得。

俺の罪。











別にあいつに、あんな事をしたかった訳じゃなかった。



自分を見てくる意志の強い瞳。



はじめは、あまりの強さにこっちが視線をそらしてしまったことも
その瞳を見続けることが出来なかったことも憶えている。

はじめて出合った姿は、今と変わらないダサいおさげ。
なのにその瞳だけは全てを飲み込んでしまうほど強く印象に残った。







きっとあいつの職業を知らなければ、あんなことはしなかった。












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あとがき↓
まだまだ続きます。




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