「起き・・・てたの・・・・・」





驚いた俺は素で喋ってしまった。





「途中からな・・・・・お前の声、気持ち良いな、なぁもっと唄って。」


「・・・・・・・・いいよ」





しばらく迷ったが、
俺は快く返事を返し、もうしばらく唄い続けた。





気付けばもう5時間目は終わりそうな時間帯だった。





「お前の声って、やっぱ綺麗だな。」


「・・・・・・・」


「な、また今度唄ってくれ。」


「・・・・・・(困)」





俺は少し困った顔をした。


実際は聞かれていないと思っていたのに、聞かれてしまったうえに唄ったのだ。





「ダメか・・・??」





俺の脚に頭を預けたまま


上目づかいでそんなこと聞かれたら、


断ることなんて出来るはずないじゃないか・・・・


それに好きな人からの申し出だ、


嬉しくないわけがない・・・・・・








フルフルっ








俺はまた首を横にふる。





「ん、ありがとう・・・・」





猿野は俺の足に頭を預けたまま


どこまでも優しく、満面の笑みで微笑んだ。





まだ少し寝ぼけているのだろう。


いつもとは少し違う、優しくて暖かな感じがする。











それを見た瞬間、俺の心臓が大きく脈打った。











そして俺は気付かなかった。


自分のしでかした行為に。


俺は思わなかった。


自分が無意識にこんなことをするなんて・・・・











気がついたら俺は猿野に触れるだけのキスをしていた。











「・・・・・・!!」





「・・・・・・!!」











その行為で、猿野は完璧に目を覚ましたようだ。


猿野は起き上がり、ただ俺を見て驚いていた。


そして俺も自分が何をやったのか理解した。








「っ!!!し、司馬・・・・・」


「・・・・・・・・・・ッ!!!!!!!!!!ご、ごめん!!!」








俺は慌てたが猿野が足にずっと頭を預けていたせいか、


少し足が痺れて行動が素早く取れない。


それでも、慌ててこの場を去ろうとした。





「っ!!・・ま、まて、司馬!!」





ピタッ。





きっと擬音で表したのならこんな感じで、俺は動きを止めたのだろう・・・





「・・・・・・・」





俺は呼び止められて止まったけど、猿野に目が合わせられなかった。








「・・・・・・あ、その・・・・・あ、俺、別に・・・その、嫌じゃ・・・なかったから・・・・」





「えっ・・・・・」








それを聞いた俺は少し驚いた。


本当に聞き間違えかとも思った。





だって、


そんな都合のいい言葉が返ってくるなんて夢にも思わなかったからだ。





これは夢ではないか、


幻ではないかと本当に自分を疑った。





絶対に、罵られて嫌われると思っていた・・・・


なのに、その猿野が俺を呼び止めて頬を朱に染めて『嫌じゃない』と言った。








俺は屋上から逃げる理由がなくなってしまった。








ただ、長い沈黙が果てなく続く。


だがその沈黙をはじめに破ったのは猿野だった。





「・・・・・なぁ、司馬。」


「ごめん・・・・」


「いや、別に、気にしてないから・・・」





猿野は頬をポリポリとかきながら明後日の方向を向いていた。





けれど『気にしてない』その言葉が俺を深く抉った。





きっと何気のない一言だったのだろう。


むしろ俺を気遣っての一言だったのだろう。





それでも俺には、その一言で俺を全て無視されたかのよな、そんな気分になった。





「あ、なぁ、お前が唄ってくれた曲、持ってるか??」





猿野は少し赤くなったまま俺に話し掛ける。





「・・・・家にあるけど」


「その曲さ、録音してくんない??なんかお前の唄きいてたら聞きたくなっちまって・・・・」


「・・・・・・別に良いよ」


「マジ!!やった〜。なんか他にもお勧めとかあったら俺に教えてくれ!!」


「・・・・わかった」





なんだか嫌だった。


俺を意識してくれないことが・・・・


俺はここにいるのに俺の存在を無視されることが





「ん、どうした??司馬・・・・なんかボーっとしてるぞ??」





そんなことを言いながら猿野は俺の目の前に来た。


俺のほうが背が高いのでやっぱり自然と上目づかいになる。











何で君はそんなに無防備なんだ。





狼ならここにもいるのに。











自分の目の前に来た猿野を俺は力を入れて抱きしめた。

















――――――――― to be next

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>>>>>あとがき
お久しぶりです。
裏は本当にヒサビサに作品展示です。
この作品の続編って、1年以上ぶり!!
もっそお久しぶりです!!(=□=;)
本気で遅くなって、ごめんなさい。

ああ、もっと頑張ろう。

H19.12.27


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