「ッ・・・ちょ!!い、いきなり何すんだよ司馬!!」


「・・・・・」





司馬は黙ったままさらに強く抱きしめてきた。








ギュっ。








「っっッ、ちょ、苦しいって、離せって!!」


「・・・嫌だ。」





「なっ!!」





「だって、放したら猿野は俺のことを見ないでしょう・・・・」


「!!」





「俺は・・・・俺は猿野が好きだ。」





「っ!!!!!」


「だから俺の気持ちを無視しないで・・・・」








お願いです。


どうか俺に気付いてください。








司馬は必死だった。


きっと、こんな風に話せるのは今だけだと思ったからだ。


今を逃してしまえば、


俺は猿野に気持ちを伝えることが出来なくなってしまうとヒシヒシと感じだ。








司馬がそう言った後、しばらく沈黙が続いた。


猿野はただ黙って俺に抱きしめられたままだった。


きっと俺はガタガタと小刻みに震えていただろう、





一世一代の大告白。





答えを聞きたくて、でも聞くことが怖くて、矛盾した想いを抱えていた。








「・・・・・・・だから言っただろう」








猿野がとうとう沈黙を破った。














「嫌じゃないって。」














そういった猿野は俺の体に手をまわし、

出来るだけ俺を安心させるように頭をそっと撫でてくれた。





俺はただ嬉しくて涙を流した。





「ありがとう猿野・・・・俺を受け入れてくれて」


「礼をいわれるようなことをしたわけじゃねぇよ・・・・・」





そんなことを言った猿野は、また少し赤くなっていた。


しばらく抱きしめあっていると、俺はふと気付く。


5時間目終了のチャイムがもうすぐ鳴りそうなことに。





チャイムが鳴れば校内一の駿足を誇る兎丸が、ここまで一気に駆け上がってくるだろう。


そうすればこの時間はあっという間に終わりだ。





俺は兎丸にどやされながらクラスに戻るだろう。





「・・・・・猿野・・・・ちょっと我慢してね・・・」


「へっ?」





俺は猿野の首に口付けを落とした。





「っぁ、ゃぁ・・・ッ!!」





またあのゾクゾクとする声が屋上に響いた。


そして少しして首から唇を離せば華が一箇所咲いていた。


俺はそれをうっとり眺めている。





でも、あまりのんびりとはしていられない。





「っ!!い、いきなり、なにしやがんだよ!!」





猿野は真っ赤になりながら司馬に文句を言った。





「・・・・ん?ああ、ちょっとね・・・目印をつけただけだよ」


「目印??」


「そう」





猿野は今一わかっていないみたいだった。


それでも、そんなところも可愛らしく見える。


俺は本当に猿野に参っているんだとわかる。





「それじゃ、また後でね猿野。今度、もう一度、ちゃんと告白するよ。

・・・今度は放さないから」





司馬が猿野の耳元でそれを言い終わると同時にチャイムが鳴った。


そして別れ際に耳にチュッ・・・と、

軽い口付けを落とし、司馬は猿野を放して、屋上から降りた。








司馬はその時すごい幸福感に包まれていた。








++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++








その頃、司馬を見送った猿野はその声を聞いたあと、ズルズルとその場に崩れ落ちた。





「あ、あのやろう・・・・・・」





司馬の声と耳キスで足腰立たなくなってしまった猿野は、

司馬が出て行った屋上扉を真っ赤になったまま軽くにらみつけていた。


流石にうとい猿野でもここまでの事をされればダメージを負ったようだ。





(つか俺ヤバクねぇ?てか、一体これからどうなるんだ・・・・・)





などとのんきなことを考えていた。








+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++








それから1分としない間に兎丸が駆けつけてきた。





「司馬君!!なんでサボったのさ!!」


「・・・・・・・・(汗)」


「えっ!!ウォークマン取りに行ったら兄ちゃんが枕しろって言ってきた?それで枕してたの??」





コクコクと俺は頷いた。





「つまり兄ちゃんと一緒だったってことだよね〜〜」





あ、兎丸に黒い影が降りてきた。





「司馬く〜ん・・・・抜け駆けは無しだよ〜〜〜」





笑顔で言っていたが、おもいっきり脅された感じだった。


仕方なく俺は肯定とも否定ともわからない笑顔で兎丸に返事を返した。


今の俺は何があっても大丈夫なような気がしたからだ。





「・・・・・・・・司馬君がその気なら・・・・僕負けないからね!!」





そう言うと兎丸は司馬の前から去っていった。


兎丸は司馬に宣戦布告をしたのだ。





しかし、実際は司馬を除いた皆はとっくに出遅れていたのだ。





1番無口だった司馬が忘れ物を取りに行ったおかげで、猿野と距離を縮めた。


結果的にはもうキスまでした仲なのである。


そして後は告白するのみ・・・・・





色んな順序を吹っ飛ばしてしまったが、

行動を起こすのには人間誰しもタイミングが必要と言うことがわかった。





そんなことをシミジミと司馬は考えていた。

















+++ END +++

















――――――――― to be next おまけ

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>>>>>あとがき
お久しぶりです。
裏はヒサビサに作品展示です。
しかも、やっと終わりました。

もしかして完結無理かもしれないと途中で思ってた作品です。

いやぁ、完結出来てよかった。(〃´∀`)

まぁ、でもとりあえずです。
長々とお付き合いいただきありがとうございます。


H20.3.31


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