椅子の倒れた音が五月蝿いくらいに教室中に広がる。

遅れて自分のかけていた眼鏡も落ちたようだ。

しかし肝心の痛みはいくら待ってもやってこなかった。





代わりに体に感じたのはどこまでも心地いい優しい体温。





恐る恐る久美子が目を開けると、
久美子は隼人に抱きしめられるように守られていた。





隼人は久美子が受身も取れずに、倒れそうになった瞬間―――――

久美子を自分の腕の中へと抱きこんでいた。





ちなみに、竜も久美子の異変に気付き手を伸ばしたが
自分から少し距離があったのと隼人が横から連れ去ってしまったこともあり
竜の腕は空をつかんだ。




竜はさらにイライラが募るのを感じた。




そしてその様子をただ見ることしか出来ない三人がいた。





日 「ヤンクミ怪我しなくて良かったけど・・・・・竜が怖いにゃぁ」


土 「・・・・・だな」


武 「・・・・・だね」








武 (竜、本当に怖いよ。まるで般若だよ・・・・ヤンクミも、もっとしっかりしてよ。)








悩めるタケ。

ただ二人が幸せであってほしいと願ったのに。

その二人が同じ人を好きになるとは思わなかった。








武 (ああ、これからどうなるんだろう・・・・・)








隼 「はぁ、なんとか間に合ったぁ・・・・・ん、あ・・・れ?」








隼人は一瞬自分の中で何かが重なった気がした。








隼 (何だ・・・・・こ・・れ・・・・?)








一瞬何かが頭の中をよぎった。

けれどそれが何かはわからなかった。








久 「あ、矢吹ありがとう。助かった。」




隼 (この感覚どこかで・・・・・??)








自分の腕の中にいる、あたたかな体温。

自分をつかんだ細い指の感覚。

軽く頬に触れる髪の柔らかな感触。


何かが重なった様に思えた。

















久 「??・・い・・・お・・い、ぶき・・・や・・・・ぶき・・矢吹!!」

















隼 「・・・・・なんだよ」


久 「だから、助けてくれたのは嬉しいが、もういい加減放してくれ」





久美子は隼人に抱きしめられたままだった。

隼人は久美子の顔が段々赤くなっていっているように見えた。

隼人は久美子のそんな反応にニヤリと笑みを漏らした。








隼 「なんですかぁ〜、いき・・な・・・・り・・・・・・」








隼人は面白いおもちゃでも見つけたように久美子に顔を近づけた。


久美子をからかおうと思って左腕で久美子を抱きしめたまま、
横を向いている久美子を残った右手をあごにかけ自分に向かせた。





しかしそれは・・・・・・失敗だった。





久美子は今眼鏡をつけていない。

というか、眼鏡が床に落ちてしまっている。




つまり、今の久美子は素顔。




それが羞恥心でほんのり顔を染め、
目じりには涙が滲んでいる上に身長差のために上目遣い。










とくん・・・・










無意識に隼人はさらに顔を近づける。





久 「や、矢吹??」


隼 「・・・・・・・・・」





隼人は顔を段々と久美子に近づけた。

これは無意識、本人もきっと気付いていない。


隼人の周りは音が一切しないといった状態だった。

周りも隼人の様子に固まっていた。

















もう少しで隼人と久美子の唇が触れる。

















と、思われた瞬間―――――

















竜 「隼人・・・・・・・・・」








竜がいち早く隼人の急な行動から立ち直り隼人を止めた。





まぁ、後ろに黒いオーラをおもいっきり背負っていた事は・・・・・
見なかったことにしてしまおう。(遠い目・・・・・タケ談)





隼 「・・・あれ、俺今なにしようと・・・・」








久 「・・・・っっっっ!!もう、いい加減に放しやがれ!!!!!」








真っ赤になってキレた久美子は隼人を殴って逃走した。

その後さらに隼人は竜にも軽く殴られた。

ちなみに床に落ちた眼鏡はすっかり忘れ去られていた。





隼 「!!!っっ!!!いってぇ!!!!!!!」


竜 「・・・・・お前が悪い」


隼 「俺がなんかしたのかよ!!」


武 「・・・・へ?」


日 「隼人気付いてないにゃぁ」


土 「世に言う無意識ってやつか?」


隼 「はぁ??」


武 「・・・・・さっき、隼人ヤンクミにキスしようとしたでしょ」














―――――― 間 ――――――














隼 「・・・はぁ!!!!俺があいつにキス!!!!冗談言わないでくだパイ!!」


日 「・・・・にゃって、あんなに顔近づけてたにゃ。」


隼 「だから、俺があいつに顔近づけたのは・・・・・近づけたのは・・・・・なんでだ??」





日 「やっぱりわかってないにゃあ」


土 「やっぱ無意識だな」





隼 「ああ、もういい!!考えるのめんどくせぇ、お前ら帰るぞ!!」





そう言った隼人は足早に教室を出て行った。


ただ、そんなことを言った隼人の顔が赤くなっていたのは
きっと隼人自身気付いていないだろう。

















夢は願望。


誰かがそんなことを言った。

















けれど、寝ている間に見る夢はほとんど忘れてしまう。





でも、例え忘れてしまったとしても人は何かを覚えている。


それは微かなものかもしれない。


けれど手で汲んだ水は流れたとしても滴は手のひらにちゃんと残っている。

















――――― 俺は貴女を守りたい

















それは無意識の貴女への愛―――――

















その頃、隼人から走って逃げた久美子は・・・・・




久 「・・・・・あ”!!眼鏡!!!!」




などと廊下で叫んでいたそうな。

















――――― END


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++後書++
ザ・中途半端★

最初と最後をシリアスっぽくして、
中身がはんなりうだうだってどうなんだろう・・・(汗)。

なんか、最初のシリアスでこれからどうなるんだと思いつつ。

途中経過で夢オチ暴露。(笑)
んで、夢オチだからこのままウダウダ会話が続くのかな?

と思っていたら、〆は真面目?

いぇぇぇい。
マトマッテマセン。

もう、思ったことを突っ込んで
使いたい言葉を突っ込んでいったらこんなことに・・・・・(T◆T)

はぁ、ダメダメです。

んでは、おまけのお知らせ。ヽ(´Д`ヽ ミ ノ´Д`)ノ

このお話にはおまけがあります。
量的にはsssくらいです。

h18.5.25


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