久美子は沈んだ気持ちが一気に浮上した気分だった。
そう言った久美子は大輪の花のような笑顔を慎に向けて浮かべていた。
「・・・早く閉めろ」
慎は久美子の言葉を流した。
しかし、その久美子の笑顔を見た慎はほんのり顔が赤くなっていた。
けれど慎は久美子から赤くなった顔を隠すように背を向けたため、
久美子は慎の表情の変化に気付かなかった。
「照れるな照れるな」
「別に照れてない、つか早くしろ」
久美子は時々、変に鋭くなるときがある。
本人は冗談のつもりで言っているのだろうが、
こっちからすれば本当に冗談じゃない。
時折本当は自分の気持ちに気付いているんじゃないかと思うほど鋭いことを言うのだ。
けれど言うだけ言って気付かない。
本当に鈍感で惨たらしいことをしてくれる担任。
「・・・・・わかったよ。
でもまだ帰る準備できてないから、もう少しかかるけど・・・」
「校門のところで待ってる」
「ああ、わかった。」
そう言うや、久美子は走って職員室に戻った。
そして慎ゆっくりと校門前で久美子を待った。
―――――――― 数分後。
「沢田!お待たせ〜」
「・・・・・・・・」
慎は黙って久美子の姿を見る。
「な、なんだよ沢田」
「いや・・・・・べつに」
「あ、もしかして。あたしのカッコなんか変だったのか?」
「普通」
「・・・せめて、似合ってるってくらいのお世辞の一つでも言ってくれ」
久美子はがっくりと肩を落とした。
慎は相変らず久美子を見ていた。
ジャージ姿でない久美子と制服姿の自分。
これはある意味、放課後デート。
しかし、相手は全く気がついていない ―――――
「はぁ・・・・」
「ん?どうした??」
「・・・・・」
「??・・・・んじゃ、帰るか沢田」
「ああ・・・・・」
久美子は慎と話しながら帰った。
というか正確には、
会話はほとんど久美子の一方的な会話だった。
時々久美子は反応の薄い慎に「おい、ちゃんと聞いてるのか??」などと問いかけ、
慎は「・・・・ああ」などと適当に返事を返していた。
そして久美子はそんな慎の様子に少し腹を立て、
また何事もなかったかのように話し掛けていた。
そんな久美子の様子が慎にはとても心地よかった。
やがて慎と久美子の家への分かれ道に着く。
「じゃあな沢田、気をつけて帰れよ」
「・・・・・・・・・・」
しかし慎は家には向かわなかった。
「って・・・・え?おい?沢田??お前の家あっちだろ??」
「・・・・・・いい、行くぞ」
そう言うと、慎は久美子の抗議を聞かずに家まで送った。
久美子の家の前。
大江戸一家の玄関先。
「・・・・なぁ、沢田。
あたしの家まで来たら、お前かなり遠回りになるだろ。
何であの時帰らなかった??」
久美子は不思議そうに首を傾けて慎に問いかけた。
分かれ道で久美子は慎と別れた・・・・・
はずだった。
しかし慎は久美子から離れなかった。
久美子はそのことが気に掛かっていた。
「・・・・・・・もう暗い」
「へ??」
「一緒に帰ったんだから送らせろ」
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++あとがき++
だいぶんお待たせしてしまい、すみません・・・・(´;ω;`)
ついでに、
毎回中途半端なところで終わって・・・・(汗)
あ、でもご安心ください。
このお話も後一回くらいで終わります。
さぁ、もうひと頑張りだ!!
H20.3.16
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