「だ・か・ら、お前まだ残ってたのかよ!!」

久美子は竜に問い掛けた。







今はもう放課後だ。







久美子は戸締りのためにここ、3Dの教室にやって来た。

太陽が大分傾き夕日で教室内が綺麗なオレンジ色に染まっている。





それなのに久美子が教室に入った事にも気付かず、
竜は何をするわけでもなく自分の席で、ただじっとしていた。









教室と一緒にオレンジ色に染まる竜の後姿。



それはまるで儚げな1枚の写真のように見えた。









しかし儚く見えるその姿に久美子は何故か無性に不安を覚えた。









「・・・・・・べつに」

「小田切、別にじゃないだろ。それにいつも言ってるだろ日本語は正しく使えって」




「・・・・・・べつになんでもない」




「はぁ・・・・たく、で、どうしたんだ??矢吹たちは??」









久美子の口から自分以外の名前が出たことで竜は少し眉を寄せた。









「・・・・・・・・・隼人たちは先に帰った」









竜は久美子を待っていた。



隼人たちにも今日は用事があるからと言って学校に1人残った。

でもまぁ、その過程で隼人たちに色々言われたが何とか誤魔化した。



竜は4人を適当に見送って、久美子を待つため3Dの教室に戻った。









「なんだ、小田切お前だけ残ったのか?珍しいな。
あ、もしかして私に何か相談したいこととかがあったとか?
それならそうと早く言ってくれよ、すぐにここに来たのに〜・・・ん?小田切??」









そんなことを久美子が話していると竜が久美子の前まで歩いてきた。





「・・・・・まだ、あの時の礼を言ってなかったから」

「へ?」

「・・・・・・・・・お前のおかげで学校に来れたから」





「・・・・・・ああ、べつにいいよ」

言葉の意味を理解した久美子はゆっくりと竜に返事を返した。





「それでも、俺はもう学校になんて戻って来れないと思ったし、
隼人たちと和解なんて出来ないと思ってたから・・・・・」





「・・・・・律儀だな。小田切は」





そう応えた久美子は、
やわらかい本当にあたたかで綺麗な笑みを浮かべていた。














トクン・・・・・・・・・・














オレンジ色の夕日で染め上がった教室、

目の前にはあたたかな笑みを浮かべる愛しい人。



何もかもが曖昧に感じた瞬間、

竜は無意識に久美子を抱きしめた。








「・・・・へっ・・・・・・・・お、小田切・・・・・??」



「・・・・・・・・・・・」









ギュッ・・・・









無意識に抱きしめた久美子の体。



それはやわらかくて、
すっぽり自分の腕の中におさまってしまうほど小さくて、
久美子の体から漂ってくる自然な甘い香りが、ただとても心地よかった。









「いきなり、どうしたんだ小田切??」

なおも竜に問い掛ける久美子。





「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

竜は何も応えなかった。





否、何も応えられなかった。














ただイトオシクテ・・・・・














無意識に抱きしめた久美子はあまりにも無防備で・・・・・


きっと自分の生徒が自分に対して恋愛感情を持っているなんて、


自分のことを異性として見ているなんて微塵も感じていないだろう。














「・・・・なぁ、小田切・・・・・お前、もしかして・・・・・」














――――― 俺ノ気持チニ気付イタ?














「お前・・・・・・人肌が恋しいのか??」














久美子はあまりにも見当違いな答えを自分の中に出した。


竜はその答えに思わず突っ込みたかったが何とか踏みとどまった。











「そーか、そーか、なるほど、うし、そうとなればわかった。
好きなだけ抱きしめろ!!遠慮はいらないぞ!!」











久美子は竜になんとも男らしい返事を返して、自分も竜の背中に手をまわした。




竜は久美子からまわされた手に少々驚いたが、
まわされた手がとても温かくて心地よかった。









ああ、本当に鈍い。

ここまですれば普通気付くだろう・・・・・



誰が、なんとも思ってない奴にこんなことをする。



それもこんな夕暮の教室の中で、

生徒とはいえ異性と二人っきりで、

どうして人肌が恋しいってそんな陳腐な理由で抱き合うんだよ。









竜は色々といいたいことがあったが、全てを胸の内にしまった。









「大丈夫だ、お前にはあたしがついてる。
3Dの皆もいる。つらい時はまた体貸してやるから・・・な。」









――――― ・・・・・・でも、たまにはこんな事もいいのかもしれない。









ただ、このオレンジ色の曖昧な時間が終わるまで竜は久美子と抱き合った。








それはまるで静かな1枚の絵の様に・・・・・・

















----------------END












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あとがき>>

へろ〜皆さま。

今回は久美子さんを少し多めに出させていただきました。
てか、私が作る小説って、片思い系ばっかですねぇ。
だって、両思い系って難しいんですもの。
まぁ、皆様楽しんでいただけましたか??


てか、まだまだですねぇ。
もっと勉強しなきゃいけないと思っている今日この頃ですが、
なかなかに上手く作れませんねぇ。


でもま、とりあえず、このお話にはおまけがついてます。


近時かそのおまけも載せたいなぁっと思っているしだいにあります。


そんではお粗末様!!





追伸↓
感想を掲示板とかでいただけると本人大喜びします。
そして無理して頑張ります。(>д<)




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