このお話はオレンジの続きです。











+++++++ 橙 +++++++











久美子は竜と抱き合ったまま、ふと焦りを感じた。




もう日は落ち、教室はオレンジ色の暖かい色から 深遠なる闇を招きいれようとしていた。

なのに竜はいまだ久美子を放さず、ただ抱きしめたままだった。




「なぁ・・・・小田切、本当にどうしたんだ?・・・・・・・というか、いい加減に放せ。」

久美子がいい加減にしろと言わんばかりに、竜の腕からもがき始めた。




「・・・・・・・・・・・」

竜は急に拒絶しだした久美子に不快感を覚え、放すまいと腕に力をこめて久美子を拘束した。




「頼むから放してくれ・・・」

「・・・・・・・・・・・」




「・・・・頼むから、小田切、せめて電気つけさせろ・・・・・・」




久美子の悲痛な願いに小田切はやっと言葉を発した。




「・・・・・・・・・なんで」

「え、いや、そのな、・・・・・・・だろ・・」




「は?」




それはあまりにもか細い声で、抱き合ったままの状態でもよく聞こえなかった。














「っ・・・・だ・か・ら、夜の学校は電気ついてなきゃ、怖いんだよ!!
てか、普通怖いだろ!!何度も言わせんな!!」














それは久美子の悲痛な叫びだった。

それが竜の耳元だったから余計に声が頭に響いた。

竜は軽く眉間にしわを寄せた。









「夜の学校は、はっきり言って苦手なんだよ!!

でも今日はこんなことするとは思ってなかったから懐中電灯持ってきてねぇんだよ!!

ここから職員室まで真っ暗な中帰んなきゃなんないんだぞ、それに戸締りしてねぇんだぞ・・・・

ここは3Dだけの別館だから、戸締りにだって時間かかるし・・・・

な、だから頼む小田切、放してくれ・・・・」









そういって竜を見上げる久美子。

竜を見上げた久美子はこれから暗い中での戸締りのことを考えると少し涙目になっていた。












ああ、なんて可愛い人・・・・・


今すぐ俺だけのものにしてしまいたい・・・・・・・・・・・・でも・・・・・











「・・・・バーカ」

「バ、馬鹿だと!!教師に向かって馬鹿とはなんだ!!」

「今日は迷惑かけたの俺だろ、だから俺も手伝う」

「本当か、小田切!!」

「ただし手伝うんだから、先に礼もらうぞ」

「へ?・・・・礼?ってな・・・・・・!!!!!!!!!!!!!」











そういった久美子の額に柔らかいものが触れた。

久美子は竜を見上げたまま少し驚いていた。









今はこれだけでいい・・・その内に手に入れるから・・・









そんなことを考え、久美子の額に願いをこめた口付け落とした竜は、
とてもいとおしげに久美子のことを見ていた。




だが当の久美子は、やはりよくわかっていなかった。









ビックリしたけど・・・・・何であれが礼になるんだ?

ま、いっか・・・・ほっぺにちゅうみたいなもんかな。









「それじゃ小田切、戸締りしよう!!」

「・・・・・・・・・・・」




自分が行った行動をまったく気にしていない久美子に竜は少し不機嫌になった。











―― なんであそこまでしてるのにさらっと流す・・・・











しかし次の久美子の行動で不機嫌な気持ちはどこかに吹き飛んでしまっていた。














ギュッ!!














「な!!」

「ん、どうした小田切??」

「・・・・・べつに」

「だから・・・・・ま、いっか・・・・それとも嫌だったか手ぇ繋ぐの??」

「・・・・・・・・・・・・」






「いやさ、もう外真っ暗だろ。

それに人肌があったほうが、ここに小田切がいるってわかるしさ、

だから手ぇ繋いだんだけど・・・・・・・あ、もしかして嫌だったか??・・ごめっ・・・・!!」






慌てて放そうとする久美子の手を小田切は放すまいと少し力をこめて握った。




「嫌じゃない・・・・・から」

「・・・・・・そっか、ならよかった。」









そう応えた久美子はまたあたたかい笑みを浮かべていた。














ドクンッ・・・・














ああ、全ては貴女しだい。









貴女は相変わらず残酷な人。




そしてとても愛しい人。




貴女は無意識的に俺を捕らえて放すことはない。




それでも捕らえられた自分を不快と思うことはない。














「それじゃ行くぞ、小田切」





















END






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++あとがき++
はいな。
やっとこさ終わりましたでよ。

これでオレンジのお話は終わりです。

まぁ、気分は純情系。を目指してみました。


大変長くお付合いいただきありがとうございました。




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