どれだけ願っただろう。
自分たちを理解してくれる人を・・・・・
どれだけ諦めただろう。
自分たちを理解してくれる人を・・・・・
どれだけ裏切られただろう。
自分たちを理解してくれると信じた人から・・・・・・
やっと、出会えた大切な人。
自分たちを、自分を理解してくれた唯一の人。
ドウカ俺ヲ、オイテイカナイデ ―――
++++ イバラヒメ 前編 ++++ NO・11
久美子が意識を手放して数分。
やっと救急車が事故現場に到着した。
慎は久美子の付き添いで救急車に一緒に搭乗した。
そして病院へ・・・・・・・
久美子は病院に着くと、すぐにオペ室へと運ばれた。
慎は医者から久美子は非常に危ない状態と聞かされた。
医者に「ご家族へ連絡を」と言われ、
久美子が事故にあってから、はじめて大江戸一家に連絡を入れた。
いつもなら何か問題があれば、すぐに大江戸一家に連絡を入れた。
だが、今の状態では無理だった。
3Dの奴らにもこの事故を伝えなければと思ったが、
もうそれ以上指は動かなかった。
動かすことが出来なかった。
もう息さえも上手く出来なかった。
連絡を入れてからおよそ数十分、
大江戸一家の3代目たちは久美子が運ばれた病院にやってきた。
慎はオペ室の前の床に力なく座り込んでいた。
「慎の字!!これは一体どういうことだ!!」
てつが慎を見つけて詰め寄ってきた。
他の大江戸一家の組員も詰め寄ってきている。
でも慎は応えることが出来ない。
「やめねぇか、てつ!!それにお前らもだ!!」
3代目はてつ達を落ち着かせた後、慎の様子を見た。
慎の姿は酷いものだった。
久美子の血がシャツにべっとりとつき、ガクランはなかった。
ガクランは久美子の血を止めるために体に巻きつけて止血に使用していた。
他にも体のところどころに付着した久美子の血液・・・・・
顔にもついているそれ―――――
それを見るだけでその事故がよほど酷い惨状だったのは理解できた。
ただ気になるのは、慎の瞳には一切の光が宿っていなかった・・・・・・
これではどちらが事故にあったのかわからなかった。
ただ青い顔をした慎。
一切の光を宿さない濁った瞳。
血だらけの衣類や体。
まるで抜け殻のような青年。
慎のその様子を見た3代目はただ静かに
「すまねぇ、おめぇには迷惑をかけた。つらかったろう・・・・・・」
と、慎に言葉を投げかけた。
だが、いつもなら会話を返すことが出来たが
慎はその言葉さえも耳に入ってきてはいないみたいだった。
お願いです。
お願いです神様。
どうか、夢なら早く覚めて下さい。
お願いです、全てを夢だと信じさせて・・・・・
これが夢だったらどんなに良かったか・・・・・・
お願いです。
誰か、これが全て悪い夢だと言って
そして悪夢よ、どうか早く覚めて――――
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++あとがき++
あと少し。
でもまだ次章書いてねぇ。
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