鼻に残る消毒液の独特なにおい
非常灯に照らされた薄暗い廊下
隔離された病室の個室には目を覚まさない彼女が一人・・・・・・
『ドウシテ俺ハ気付カナカッタ・・・・・・』
全ては一瞬
全ては闇の中
光と闇が交差する場所で、
ただ俺は独り、取り残されている―――――――
++++ イバラヒメ 中編 ++++ NO・2
お願いです。
お願いです。
―――――神様。
俺から彼女を奪わないで・・・・・・
心からの悲痛な叫びは
何処までも深く、暗い闇に飲み込まれていく―――――
――イナイ
――――イナイ
――――――イナイ
彼女ガ何処ニモ――――――――イナイ
精神的、肉体的にもボロボロになっていた慎は数時間前のことをゆるりと思い出していた。
まさかこんな事になるなんて思ってもみなかった幸せな数時間前。
ドウシテこんなにも無慈悲に全ては壊れてしまったのだろう・・・・・・・
今日も彼女はいつものように楽しく笑っていた。
数時間前まではあんなに幸せそうに笑っていた。
いつものように笑ってクラスのやつらとバカをやっていたのに・・・・・・・
ドウシテお前は今ココで眠り続けてるんだ・・・・・・なぁ、ヤンクミ?
一番、愛していた。
一番、心惹かれた。
誰よりも愛おしかった彼女の笑顔は無い。
今あるのは彼女が目を覚まさないかもしれないという・・・・悪夢のような現実だけだった。
彼女が永久に目を覚まさない?
もしかしたら、この世界の何処にも彼女が居なくなる?
そんなこと考えたくも無い―――――
・・・・・信じられない事が起こった。
ありえない事が目の前で現実になった。
一瞬で、悪夢が俺の全てを塵のように破壊した。
俺はもし、このまま彼女を失ってしまえばどうなるのだろうか・・・・・・・
俺は俺でいられるのだろうか・・・・・
もう、そんな事すらわからない。
今は自分の位置さえ酷く曖昧で、
自分の体すら上手く動かすことが出来ない。
何もかも限界だった。
胸の内が、だんだんと真っ黒な闇に覆われていく。
ただ薄暗い気配を感じる。
見えなくても理解できる。
じわりじわりと侵食してくる、黒い闇という名の感情。
己の内側にある仄暗い闇の底が、
まるで俺が堕ちて来るのを今か今かと待っているように思えた―――――
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++あとがき++
お待たせしました。(=□=;)
そしてごめんなさい。なかなかお話すすみません。lllorz
h20.4.17
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