俺たちが救いを求めて伸ばした手を

貴女はどんなことがあろうとも放さなかった・・・・




では貴女が無意識にでも救いを求めたのならば

俺は貴女のための盾となり剣となろう・・・・




たとえ貴女がそれを望まなかったとしても









――― 俺は貴女を護る ―――









そう思っていた・・・・・

俺が貴女を護ると・・・・・・




なのに、いつも俺は無力だ。









++++ イバラヒメ 前編 ++++  NO・5









「も・・う・・・・大・・丈・夫・・・泣か・・な・・・・い・で」




意識を取り戻した久美子は慎の腕の中で、

道端でただ泣いている女の子に薄く笑顔を向けた。




女の子をよく見れば膝を軽く擦りむいていた。




慎は久美子がその女の子に話し掛けるそれまで気付かなかった。

それほどまでに気が動転していた。









――― 久美子が車に轢かれた経緯・・・・

何故自分の後ろを歩いていた久美子が車に轢かれた―――









ワザワザ彼女が車の前に飛び出すはずかない。

そうなる経緯がどこかに隠れていたのだ。









俺は気付かなかった。




彼女は気付いた。




彼女以外は気付かなかった。














そしてその結果がこれだ。














きっと彼女は道路に飛び出した女の子に気が付いた。

けれど彼女を轢いた、車を運転していた奴は気付かなかった。





彼女は女の子を助けるために突き飛ばした。

そして泣いている女の子の代わりに彼女は車に轢かれた。






「ど・・こか・痛・・・・・・・い?」

「もう・・・・」

「・・・も・う・・・怖く・・・・な・・い・・・よ」

「頼むから、喋るな!!」






久美子は女の子を少しでも安心させようと、
自分に鞭打つ様に女の子を気にかけた。




しかし言葉は途切れ途切れで、音もほとんどかすれていた。

女の子に彼女の声は届いていないだろう。

それでも彼女は女の子に話し掛けていた。






慎はその久美子の姿があまりにも痛々しくて見ていられなかった。






自分の腕の中で段々とぬくもりを失いつつある愛しい人。









ああ、なんて無力。









どうして俺は肝心な時に彼女を救うことが出来ない。




どうして俺は見ていることしか出来ない。









俺はもう二度と大切なものは失いたくないのに・・・・・・














―― 愛しい人よ、どうか俺をヒトリニしないで ――




















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++あとがき++
イバラヒメ5話目。
この5話は久美子さんがどうして車に轢かれたのかを載せてみました。

h18.3.18


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